お母さんの期待
実習生として日本に娘を送る母親の気持ち
MJBL: 新型コロナウイルスの影響で娘さんの来日が遅れていますが、今の気持ちをお聞かせください。
コロナの影響がこんなに長引くとは想像もしていませんでした。すぐに来日できると思い、昨年のはじめに、娘はNGOの仕事を辞めてしまいました。無職の状態がもう一年以上が経過しています。NGOからまた働きに来ないかと言われたようですが、来日となれば、また辞めることになるので、娘は丁重に断ったようです。我が家の経済状況では、娘に仕事をしてほしいのですが、カトマンズでも仕事はなかなか見つからないようです。早く来日してほしいですね。
MJBL: 財団の公募を娘さんに隠していたそうですね。なぜでしょう。
ネパールでは悪徳人材派遣会社が多くて、騙される人も多くいます。だから、大事な娘ですから、心配で伝えることができませんでした。娘は他人から公募の話を聞いて、締め切り日に応募したそうです。娘には「何で教えてくれなかったの」と怒られましたよ。その後、日本の受入れ農家の方もカカニ村に訪問してくれ、今では娘を送り出す心の準備もできています。
MJBL: 実習先は日本のイチゴ農家です。娘さんは小さい頃から畑仕事を手伝ってきたそうですし、すぐに慣れると思いますが。
そうかも知れませんが、日本は規律や規則を重んじる国ですから、同じ農業といっても環境が違うので、苦労すると思います。娘は小さい頃から、わがままを言わずに家庭の状況を理解してくれました。だから、もともとはシラという名前だったのですが、シャハン(耐えるという意味)をつけて、シャハンシラという名前にしたのです。娘はどんな状況だろうと、耐えて仕事すると信じています。
MJBL: 実習制度を通じて、娘さんに期待することは何でしょうか。
ネパールで応用できる技術を学んでほしいです。また、ネパールに帰ってきたら、自分の土地を購入して、そこでいちご栽培をしてほしいです。我が家は母子家庭なので、他人の畑を借りて、とうもろこし、大根、えんどう豆、キュウリ、いちごを栽培して生計を立ててきました。集荷の車が深夜1時に来ていたので、夜もろくに寝ることができず、本当に大変でした。苦労してきた分、娘には経済的に自立してほしいと思っています。